育成就労制度は外国人労働者を守れるのか? ― カナダの経験から考える日本の新制度

2027年4月1日、日本では現在の技能実習制度(Technical Intern Training Program: TITP)に代わり、「育成就労制度(Employment for Skill Development Program)」がスタートする予定です。

外国人労働者の受入れ制度として大きな転換点となるこの改革について、私はカナダの移民コンサルタントとして外国人労働者制度に携わってきた立場から、大変興味深く見ています。

なぜなら、日本が直面している課題は、実はカナダでも長年議論されてきたテーマだからです。

なぜ技能実習制度は見直されるのか

技能実習制度は、本来、開発途上国への技能移転を目的として創設されました。

しかし実際には、多くの産業における人手不足を補う役割を担うようになり、その運用について国内外から様々な批判を受けてきました。

特に問題視されたのは、

  • 実習先への依存度の高さ
  • 転職の難しさ
  • 労働環境に関する問題

などです。

一方で、日本では少子高齢化による労働力不足が深刻化しており、建設業、介護、農業、製造業、外食産業など、多くの業界が外国人労働者に支えられています。

そのため政府は、外国人材の育成と労働力確保を両立できる新たな制度として育成就労制度を創設することになりました。

何が変わるのか

新制度の大きな特徴の一つは、一定の条件を満たした場合に転籍(転職)が認められる点です。

これまでの技能実習制度では、実習先を変更することは容易ではありませんでした。

新制度では、一定期間の就労や技能・日本語能力などの要件を満たした場合、他の受入機関への転籍が可能になる方向で制度設計が進められています。

また、育成就労制度から特定技能制度への移行ルートも明確化される予定であり、外国人労働者が日本でより長期的なキャリアを形成できるようになることが期待されています。

転職の自由化は本当に解決策なのか

ここで興味深いのは、「転職の自由化」をどこまで認めるべきかという問題です。

カナダでは、外国人労働者が雇用主に依存せざるを得ない状況が報道されるたびに、「雇用主指定の就労ビザを廃止し、すべてオープンワークパーミットにすべきだ」という意見が出てきます。

確かに、労働者保護という観点から見れば、自由に転職できる制度は魅力的に見えます。

しかし、実際にはそれほど単純な話ではありません。

雇用主は外国人労働者を採用するために、

  • 採用活動
  • 教育訓練
  • 日本語指導
  • 現場での技能指導

などに多くの時間とコストを投資します。

もし労働者が訓練を受けた直後に自由に転職できるのであれば、雇用主は長期的な人材育成への投資をためらうようになるかもしれません。

また、頻繁な転職が当たり前の市場になれば、外国人労働者自身も「定着しない人材」と見なされるリスクがあります。

日本は「中間的な解決策」を模索している

私が今回の制度改革で注目しているのは、日本が完全な自由化でも完全な雇用主拘束でもない、「中間的な解決策」を模索している点です。

新制度では、外国人労働者にこれまで以上の移動の自由を与えながらも、一定の条件や手続きを設けています。これは、

  • 労働者保護
  • 人材育成
  • 雇用主の投資回収

という三つの目的のバランスを取ろうとする試みとも言えるでしょう。

もちろん、制度の成否は実際の運用次第です。

しかし政策設計という観点から見ると、日本は外国人労働者の保護と長期的なスキル育成の両立という難しい課題に対して、現実的な折衷案を模索しているように見えます。

おわりに

外国人労働者政策は、日本だけでなくカナダを含む多くの先進国が直面している共通の課題です。

2027年に始まる育成就労制度がどのような成果を上げるのかはまだ分かりません。

しかし、外国人労働者の権利保護と人材育成のバランスをどのように取るのかという問いは、今後ますます重要になっていくでしょう。

私は今後も、カナダと日本の両方の制度を見てきた立場から、この改革の動向を注視していきたいと思います。

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