はじめに
前回の記事では、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、「技人国ビザ」)の基本的な許可要件について解説しました。
しかし、実際の審査では、許可要件を形式的に満たしているだけでは十分ではありません。
出入国在留管理庁(以下、「入管」)は、申請書類に記載された内容だけではなく、仕事内容、雇用企業、申請人の学歴や職歴、提出資料全体の整合性などを総合的に審査し、技人国ビザに該当するかどうかを判断します。
そのため、大学を卒業していても、あるいは日本企業から内定を得ていても、仕事内容や企業の事業内容、提出資料の説明に問題がある場合には、不許可となることがあります。
この記事では、入管が実際にどのような視点で申請を審査しているのかを、審査基準や公表されている不許可事例をもとに解説します。
なお、技術・人文知識・国際業務ビザの基本的な許可要件については、Part 1「技術・人文知識・国際業務ビザの許可要件|取得条件・学歴・実務経験を徹底解説」で詳しく解説しています。
入管は職種名ではなく実際の仕事内容を審査する
技人国ビザの審査で最も重要なのは、実際に従事する仕事内容です。
「システムエンジニア」「マーケティング担当」「海外営業」といった職種名だけで許可・不許可が決まるわけではありません。
入管が確認するのは、
申請人が日常業務として何を行う予定なのか
という点です。
例えば、システムエンジニアとして採用される場合には、
- システムの設計
- プログラム開発
- 要件定義
- システム保守・運用
など、専門知識を必要とする業務が中心であることが求められます。
一方、採用時の肩書きが「システムエンジニア」であっても、実際の仕事内容が商品の梱包や倉庫内作業などである場合には、技人国ビザには該当しないと判断される可能性があります。
つまり、会社が付けた職種名ではなく、実際の業務内容が審査対象となることを理解しておく必要があります。
単純作業を主たる業務とすることはできない
技人国ビザは、専門的な知識や技術を活用する業務を対象とした在留資格です。
そのため、単純作業や現場作業そのものを主たる業務とすることは認められていません。
例えば、
- 商品の箱詰め
- 工場でのライン作業
- 倉庫内での仕分け作業
- レジ対応のみを行う接客業務
- 清掃業務
などが主な仕事内容である場合には、原則として技人国ビザには該当しません。
ここで注意したいのは、
「単純作業を一切行ってはいけない」という意味ではない
という点です。
例えば、営業担当者が商品の確認や在庫確認を行ったり、エンジニアが試作品の組立作業を一時的に行ったりすることは、専門業務に付随する範囲であれば通常問題となりません。
重要なのは、
業務全体の中で何が主たる業務であるか
です。
入管は、仕事内容全体を見たうえで、専門的な業務が中心となっているかを判断します。
研修期間中の現場作業は認められることがある
「現場作業を行うと技人国ビザでは認められない」という話を耳にすることがあります。
しかし、実際には研修や教育の一環として一時的に現場作業を行うことまで直ちに問題となるわけではありません。
例えば、製造業のエンジニアが製品や製造工程を理解するために工場で研修を受けたり、営業担当者が商品知識を習得するために店舗で研修を受けたりすることは、多くの企業で行われています。
重要なのは、その現場作業が一時的な研修であるのか、それとも継続的な主たる業務であるのかという点です。
研修終了後も現場作業が中心となる場合には、専門的な業務とは認められず、不許可や在留資格更新時の問題につながる可能性があります。
入管は雇用企業についても審査する
技人国ビザでは、申請人だけでなく、外国人を受け入れる企業についても審査が行われます。
例えば、次のような点が確認されます。
- 会社が実際に事業を行っているか
- 継続して外国人を雇用できる経営状況にあるか
- 雇用契約の内容が適正であるか
- 業務内容が会社の事業内容と整合しているか
設立直後の会社や事業実績が少ない会社であっても、直ちに不許可になるわけではありません。
ただし、そのような場合には、事業計画書や契約書などを提出し、事業の実態や継続性について十分に説明することが重要になります。
業務内容は会社の事業内容と整合している必要がある
入管は、申請人の仕事内容だけでなく、それが会社の事業内容と整合しているかも確認します。
例えば、IT企業がソフトウェアエンジニアを採用するケースであれば、通常は業務内容との整合性に問題はありません。
一方で、飲食店がシステムエンジニアを採用する場合には、その会社で本当にシステム開発業務を行う必要があるのかについて、より詳しい説明が求められることがあります。
つまり、
- 会社はどのような事業を行っているのか
- その会社において申請人はどのような役割を担うのか
が合理的に説明できることが重要です。
提出資料全体に一貫性があることが重要
実務上、不許可の原因となることが多いのが、提出資料の内容に矛盾や不整合があるケースです。
例えば、
- 雇用契約書と理由書で仕事内容が異なる
- 会社案内に記載された事業内容と申請書の説明が一致しない
- 職務内容説明書の内容が曖昧で専門性が読み取れない
といった場合には、入管は仕事内容や雇用の実態について疑問を持つ可能性があります。
一つひとつの書類だけを見ると問題がないように見えても、申請書類全体として一貫した説明ができていることが重要です。
公表されている不許可事例
入管は、過去の不許可事例を公表しています。
その一例として、人文科学の分野を専攻して大学を卒業した申請人が、弁当工場において食品の箱詰めなどを行う業務に従事する予定であったため、不許可となった事例があります。
このケースでは、日本企業との雇用契約はありましたが、実際の仕事内容が専門的な知識を必要とする業務ではなく、主たる業務が単純作業であると判断されました。
この事例から分かるように、学歴や雇用契約だけではなく、実際の仕事内容が技人国ビザの対象となるかどうかが審査の中心となります。
申請前に確認しておきたいポイント
技人国ビザを申請する前に、次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 仕事内容は専門的な業務が中心となっているか
- 学歴や職歴と仕事内容に十分な関連性があるか
- 雇用企業の事業内容と仕事内容に整合性があるか
- 雇用契約書や職務内容説明書の内容は一致しているか
- 提出資料全体として一貫した説明ができているか
これらを事前に確認することで、不許可となるリスクを大きく減らせる場合があります。
この記事のポイント
- 入管は職種名ではなく、実際の仕事内容を重視して審査します。
- 単純作業を主たる業務とすることは、原則として技人国ビザでは認められません。
- 一時的な研修として現場作業を行うことは認められる場合があります。
- 雇用企業の事業内容や経営状況、仕事内容との整合性も審査対象となります。
- 提出資料全体に一貫性があることが、許可取得の重要なポイントです。
参考資料
本記事は、出入国在留管理庁が公表している法令、審査基準、運用要領及び公表事例を参考に作成しています。
▶ 出入国在留管理庁(Immigration Services Agency)
(公式サイトへの外部リンク)
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